「現金は必要です。自販機はお釣りが出ないので小銭。配給なんて来ません。開いているお店を探し回って食料を買いました」
これは、実際に大地震を経験した方が残したコメントです。
私は元消防士・救急救命士として20年間、震災をはじめとする数々の災害現場に出向いてきましました。被災地で生存者の声を直接聞いてきた立場から言う。このコメントは、100%リアルです。
キャッシュレスが当たり前になった今こそ、あえてはっきり伝えたい。
「防災現金」を今すぐ準備してほしい。
この記事では、なぜ現金が必要なのか・いくら必要なのか・どんなお札と小銭を用意すべきかを、元消防士の視点と被災者のリアルな声をもとに完全解説します。
キャッシュレスは「停電の瞬間」に全滅する
日本は今、キャッシュレス大国へ向かっています。PayPay・楽天ペイ・クレジットカード…スーパーでもコンビニでも、現金を使わない生活が当たり前になってきましました。
だからこそ、こんな疑問を持つ人が増えています。
スマホさえあれば払えるんじゃないの?わざわざ現金を準備する必要ある?
そのスマホを充電する電気がない、というのが災害の現実です。停電になった瞬間、キャッシュレスは全部使えなくなります。
キャッシュレス決済が使えなくなる理由は3つある。
① 停電でレジが動かない
コンビニもスーパーも、レジは電気で動いています。停電になれば、クレジットカードの読み取り機もQRコードのスキャナーも、すべて機能を失います。
② 通信障害でカード認証ができない
仮に電気があっても、基地局が被災して通信が途絶えれば、カード決済の認証(オーソリ)が通りません。インターネット接続が必要なスマホ決済も同様です。
③ ATMが止まって補充もできない
「後でATMで下ろせばいい」という考えも通じません。銀行のATMは停電・通信障害で止まるます。復旧後も長蛇の列になることが多い。
🔋 例外:自家発電があればキャッシュレスは一部復活する
店舗側がポータブル電源で電気を確保していれば、レジが動く可能性はあります。さらに通信が生きていれば、QR決済も使える店が出てきます。ただし、それは「店舗側の準備次第」。買い手の自分にできるのは、まず現金を用意しておくことです。
※ 在宅で電気を切らさない備えについては EcoFlow DELTA 2を2年使ったリアルレビュー で詳しく解説しています。
北海道胆振東部地震(2018年)では、道内全域295万戸が一斉停電しました。キャッシュレスが「使えない地域」と「使える地域」に分断されました。現金を持っていた人と持っていなかった人で、天と地ほどの差があったのです。
「配給が来る」は幻想だった|被災地の現実
被災したことがない人は、こう思いがちです。「避難所に行けば食料と水が配られます。お金がなくても大丈夫なんじゃないか」と。
私は元消防士として、東日本大震災をはじめ複数の被災地に出動しましました。現地で生存者の声を直接聞いてきましました。だからこそ言えます。
配給が届くまでの最初の数日間が、最も過酷です。
被災直後は道路も寸断されてる。支援物資が届くのは早くて2〜3日後、場所によっては1週間以上かかることもあります。「待ってれば来る」っていう考えは、命取りになりうる。
実際に大きな地震を経験した方たちはこう語っています。
被災者の声(東日本大震災経験者)
「自販機はお釣りが出ないので小銭が必要でしました。配給なんて来ません。開いているお店を探し回って食料を買いました」
被災者の声(熊本地震経験者)
「小銭は必須です。現実を知ってほしい。熊本地震を経験した立場からはっきり言います」
この声が、すべてを物語っています。
「自販機でもお釣りが出ない」問題
📊 数字で見る現金の重要性
金融庁の事後検証によれば、東日本大震災では金融機関の窓口・ATMが正常化するまでに地域によっては約4日〜1週間かかったとされています。「最低でも1週間分の生活費を現金で備える」のが現実的なラインです。
停電から復旧した直後の自動販売機は、特殊な状態になることがあります。
自販機が動いてるならOKじゃないの?
機械は動いてても、釣り銭の補充ができてない状態で動いてることがあります。500円を入れてジュース(130円)を買っても、370円のお釣りが出えへん。つまり「500円払ってジュース1本」になってしまう。
また、お店が営業していても「万札はお断り・お釣り不可」という状況が起きる。被災して物資不足の中、店員さんも釣り銭の補充ができない状態で対応しているからです。
つまり、ピッタリ払えるかどうかが、「買えるか買えないか」を左右するのです。
元消防士が考える「防災現金」の正解
では、いくらをどんな形で準備すればいいのか。現場経験をもとに具体的に答える。
推奨金額:家族4人で2〜3万円
キャッシュレスが使えない期間は最大3〜7日間と考えておくと安全です。食料・飲料水・必要品の購入を想定すると、家族4人で2〜3万円あれば当面の緊急期間を乗り切れる。
| 種類 | 枚数・金額 | 理由 |
|---|---|---|
| 千円札 | 15〜20枚 | 万札は「釣り銭不可」で使えないケースが多い。千円札が最も汎用性が高い |
| 五千円札 | 2〜3枚 | まとめて払う場面に備える |
| 500円玉 | 5〜10枚 | 自販機・少額購入に必須 |
| 100円玉 | 10〜20枚 | ピッタリ払いの要。最重要小銭 |
| 50円玉 | 5枚 | 端数調整用 |
| 10円玉 | 10枚 | 端数調整用 |
忘れがちな盲点:公衆電話用に10円玉を必ず数枚
これは多くの防災記事でも見落とされがちなポイントです。大規模災害時の連絡手段として、公衆電話の重要性が再認識されています。
NTT東日本・西日本によれば、災害発生時には公衆電話が「災害時優先電話」として通信規制の対象外となり、携帯電話がつながらない状況でも比較的優先的に使えるとされています。
その公衆電話を使うために、10円玉が手元に最低5〜10枚必要になります。100円玉でも使えるが、釣銭が出ないため、短い通話では10円玉のほうが効率的です。
📞 公衆電話の鉄則
10円玉だけを「公衆電話専用」として小さなジップロックに分けて入れておく。家族の安否確認・緊急連絡用と決めて、絶対に普段使いしない。
マイナンバーカードがあれば、最後の砦になる
大規模災害が発生し、現金の備えが足りなかった場合の最後の手段がこれです。
過去の大震災では、金融機関が本人確認書類だけで通帳・印鑑なしの預貯金引き出しに応じる「特例措置」を実施してきましました。マイナンバーカードはその際の最強の身分証明書になります。
東日本大震災時には、金融庁の要請を受けて多くの金融機関が同様の対応をとった事例が報告されています。ただし、混乱期にはどの店舗で対応してくれるかは状況による。あくまで「現金の備え」が前提で、マイナンバーカードはバックアップと考えるのが安全だ。
2〜3万円も現金で別に用意するの、ちょっと難しくない?
一度に揃えなくていい。今月は千円札を5枚だけでもええ。防災リュックの奥に封筒を入れて「緊急用」って書いておく。それだけで今日から備えが始まる。
保管の鉄則「3か所に分散させる」
現金の備えには、置き場所も重要です。一か所にまとめると、それを取り出せない状況が生まれる可能性があります。
① 防災リュックの中(5,000円程度)
小銭中心。避難直後に使うための当面の資金。ジップロックに入れて水濡れ対策をしておく。
② 自宅の耐火ケース・金庫(1〜2万円)
在宅避難時のメイン資金。お札は千円札中心で保管します。
③ 財布の中(日常から少額現金を持ち歩く)
外出中に被災することも十分あり得る。財布に3,000〜5,000円の現金を常に入れておく習慣を作る。
避難所での盗難には注意が必要や。大金を一か所に入れて持ち歩くと、狙われるリスクがあります。分散させておくことは、盗難リスクを下げることにもなります。
防災リュックに現金を入れたまま、うっかり使っちゃいそうで不安なんだけど
封筒に「緊急用・絶対使わない」とマジックで書いてガムテープで封をすれば、心理的なブレーキになります。家族全員に「これは防災用だから触らないで」と伝えておくことも大切です。
今日からできる「防災現金」チェックリスト
読んだだけで終わらせないために、今日できることをリストにしました。一つずつで構わない。まず動くことが大事です。
- 千円札を10枚、封筒に入れて「緊急用」と書いた
- 500円玉・100円玉を各5枚ずつ用意してリュックに入れた
- 封筒に「防災現金・使用禁止」と書いてテープで封をした
- 保管場所を家族全員に伝えた
- 財布にも最低3,000円の現金を常備するようにした
この記事で紹介した防災グッズ
①自宅保管用|耐火バッグ(書類・現金を火災から守る)
②防災リュック用|防水ポーチ(現金を水濡れから守る)
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まとめ:現金は「時代遅れの備え」じゃない
キャッシュレス化が進めば進むほど、現金の価値は「非常時限定の最強ツール」になっていきます。
被災地で「現金を持ってきてよかった」と後悔した人はいない。「持ってこなかった」と後悔した人は、無数にいる。
備えておいて、後悔することはありません。後悔するのは、備えなかったときです。
防災リュックの中に、今日、千円札を1枚でも入れてほしい。それが、命を守る最初の一歩になります。
「備えておいて、知識を深めて、日々考えることが生きること」。現金一枚から、その一歩を始めよう。
現金の備えは、今日この瞬間から始められる。財布の中の500円玉一枚でも、それが「備え」の第一歩です。それではっ!

