妊娠中の防災、夫が先にやること5つ|救急救命士の私でも「車中泊になったら」は不安だった

「妻のお腹が大きくなってきた。もし今、大きな地震が来たらどうしよう」——災害のニュースを見るたびに、そう思ったことはありませんか。

正直に書きます。妻の妊娠中、私は災害の話を一度もしていませんでした。持ち出し用に何かを分けておくこともしていません。救急救命士として、車中泊になったときの知識はある程度あります。それでも「出産が近い妻と車中泊になったら」と考えると、不安は不安でした。

知識がある人間でも不安になる。だからこの記事では、自治体・学会・厚生労働省の資料で確かめられることだけを使って、今の私なら妊娠中に先にやっておくことをまとめました。妊娠中の方本人にも、パートナーの方にも読んでほしい内容です。

▶ この記事の結論(元救急救命士)

  • 妊娠中の防災は、「いつも持つ物」と「家族の段取り」から。重い防災グッズを増やすより先にやることがあります
  • 母子健康手帳はいつも持ち歩く。本人が話せないとき、唯一の情報源になるからです。マイナ保険証も一緒に
  • 急にお産が近づいたとき・体調が急変したときの連絡方法を、かかりつけの産院と決めておく
  • 車中泊は血栓に注意。足を伸ばせる寝床・水分・かかとの上げ下ろし。寝床を作るのはパートナーの役目です
  • 避難所では「妊娠中です」とスタッフに先に伝える
まもる

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妊娠中の防災って、防災グッズを妊婦さん用に増やせばいいんでしょ?

みんなの隊長

みんなの隊長

増やす前に、やることがあります。妊娠中の体は、いつ・どこで変わるか分かりません。まずは「どこにいても、自分の情報を渡せる」状態にしておくことです。

妊娠中は、災害のとき特に配慮が必要な時期

妊娠中や産後の女性、乳幼児は、災害のときに特別な支援が必要とされる人たちです。内閣府の検討会で資料として紹介された「あかちゃんとママを守る防災ノート」でも、そう位置づけられています。

理由の一つは体の変化です。日本呼吸器学会は、血栓ができる原因の例として「長時間の座位」「脱水」と並んで「妊娠」を挙げています。避難所や車の中で動かずに過ごし、水分も足りない。災害のときは、この条件が重なりやすくなります。

もう一つは、お産が予定どおりに進むとは限らないことです。目黒区は、急にお産が近づいたときや体調が急変したときの連絡方法を、かかりつけ医と話し合っておくよう呼びかけています。

救急救命士の私が、妻の妊娠中にやっていなかったこと

ここは、私の反省です。

  • 災害が来たらどうするか、妻と話したことはありませんでした
  • 母子手帳や薬を、持ち出し用に分けてはいませんでした
  • 「車中泊になったら」と考えると、不安でした

私自身は、マイナンバーカード(マイナ保険証)をMOFT(スマホに付けるカードケース)に入れて、いつも持ち歩いています。この「いつも持つ物にする」やり方は、妊娠中の備えにそのまま使えます。

救急救命士として、車中泊で気をつけることはある程度知っています。それでも、出産が近い妻と車中泊になったらと考えると、不安は不安でした。知識があっても不安は消えません。だからこそ、不安を減らす段取りを先に決めておく必要があります。

今の私なら先にやる5つ(妊娠中の防災)

① 母子健康手帳とマイナ保険証を「いつも持つ物」にする

目黒区は、母子健康手帳を「妊婦本人が話せない状況になるなど緊急の際、唯一の情報源となる」と説明しています。既往歴や常用薬、アレルギーも書かれています。持ち出し袋にしまうのではなく、いつものバッグから出さないのが基本です。妊婦健診から帰ったら、バッグに戻すところまでを習慣にします。

マイナ保険証も一緒に持ちます。厚生労働省によると、災害のときは医療機関が「災害時医療情報閲覧機能」を使い、カードがなくても氏名や生年月日などから薬や診療の情報を確認できます。さらにカードを持っていれば、避難所で自分のスマホからマイナポータルにログインし、普段飲んでいる薬を医療関係者に見せることもできます(ログインには4桁の暗証番号が要ります)。

② かかりつけの産院と「急なとき」の連絡方法を決めておく

目黒区は、急にお産が近づいたときや体調が急変したときの連絡方法を、かかりつけ医と話し合っておくよう勧めています。妊娠37週以降は、出産予定の医療機関が機能しているかをインターネットで確認しておくことも挙げています。

次の妊婦健診で「災害で電話がつながらないときは、どうすればいいですか」と一度聞いておく。これなら今週できます。

③ 車中泊になったときの「寝床」はパートナーが作る

日本呼吸器学会は、車中泊では足が低い位置のまま動かしにくく、肺塞栓症のリスクが高まるとして、足を自由に伸ばせる環境を確保することが大切だとしています。予防には、1日に500mLのペットボトル2本を目安にした水分、かかとの上げ下ろしや、ふくらはぎを軽くもむことを挙げています。

シートを倒してフラットにする、段差を荷物やマットで埋める。足を伸ばせる寝床を作るのは、お腹の大きい本人ではなく、パートナーの役目です。学会は車中泊が必要となる方に弾性ストッキングも勧めていますが、妊娠中に使うときは、かかりつけ医に相談してからにしてください。

救急救命士として付け加えます。片方の足だけのむくみや痛み、急な息苦しさ、胸の痛みが出たら、様子を見ずに119番してください。

▼ 車中泊の血栓対策を詳しく

足を伸ばせる寝床の作り方と、車中避難でやってはいけないことを7つにまとめました。

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④ 避難所では「妊娠中です」と先に伝える

目黒区は、避難所では妊娠中であることや乳幼児がいることをスタッフに伝え、周りの人に手助けを求めるよう呼びかけています。お腹が目立たない時期は、言わなければ周りは気づきません。本人が言いにくいときは、パートナーが代わりに伝えます。

⑤ 「災害の話」を夫婦で一度しておく

私がやっていなかったことです。話しておきたいのは3つだけです。

  • 離れているときの連絡方法(携帯電話がつながらないときは災害用伝言ダイヤル171)
  • 家にいられないときに集まる場所(近くの避難所)
  • パートナーが職場から帰れないとき、誰を頼るか(近所・実家・産院)

171の使い方と、災害のときに手元に置いておきたい現金の目安は、こちらにまとめています。

▼ 171の使い方と災害時の現金

携帯電話がつながらないときの連絡方法と、家族で持っておきたい現金・小銭の目安。

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妊娠中の持ち出し袋は「軽く」、重い物はパートナーが持つ

持ち出し袋は、中身を増やすほど重くなります。妊娠中の体で重い袋を背負って避難するのは現実的ではありません。本人が持つのは「いつも持つ物」と軽い袋だけにして、水や食べ物など重い物はパートナーの袋に入れておきます。

誰が持つか 中身の例
本人(いつも) 母子健康手帳・マイナ保険証・お薬手帳(飲んでいる薬があれば)・スマホ
本人(軽い袋) 常備薬・ナプキン・羽織れる上着・タオル・少しの飲み物
パートナー 水・食べ物・携帯トイレ・モバイルバッテリーなど重い物

必要な物は、妊娠週数や体調で変わります。常備薬などは、かかりつけの産院にも確かめておいてください。防災リュックそのものを選ぶなら、こちらで比べています。

▼ 防災リュックを選ぶなら

消防士監修のセットを中心に、実用性で5つを比べました。

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出産後は「赤ちゃんの備え」に切り替わる

赤ちゃんが生まれると、備えの中身はミルクや暑さ・寒さの対策に変わります。停電したときの赤ちゃんの備えは、こちらにまとめています。

▼ 停電したら赤ちゃんのミルクは?

お湯の確保と液体ミルクの備えを、手順で解説しました。

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▼ 冬の停電と赤ちゃんの寒さ

停電した冬の夜に赤ちゃんを暖める方法と、電源の備え。

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妊娠中の防災についてよくある質問

Q. 妊娠中に車中泊で避難しても大丈夫ですか?

A. 日本呼吸器学会は、車中泊では肺塞栓症のリスクが高まるとしています。やむを得ず車中泊をするなら、足を伸ばせる寝床を作り、水分をとり、かかとの上げ下ろしなどで足を動かしてください。片方の足のむくみや痛み、息苦しさ、胸の痛みが出たら119番です。

Q. 母子健康手帳は、持ち出し袋に入れておけばいいですか?

A. いつも持ち歩く方が確実です。目黒区は、母子健康手帳は本人が話せない緊急の際に唯一の情報源になると説明しています。外出先で被災することもあるので、いつものバッグから出さないようにします。

Q. マイナ保険証を持っていないと、災害のときに受診できませんか?

A. 厚生労働省によると、災害のときは医療機関が「災害時医療情報閲覧機能」で、カードがなくても氏名や生年月日などから薬や診療の情報を確認できます。ただ、カードがあれば、避難所で自分のスマホからマイナポータルにログインし、服薬の履歴を医療関係者に見せることもできます(4桁の暗証番号が必要です)。

Q. 避難所で妊娠中だと伝えたほうがいいですか?

A. はい。目黒区は、妊娠中であることをスタッフに伝え、周りの人に手助けを求めるよう呼びかけています。言いにくいときは、パートナーが代わりに伝えてください。

Q. 臨月(妊娠37週以降)で気をつけることは?

A. 目黒区は、妊娠37週以降は出産予定の医療機関が機能しているかをインターネットで確認しておくよう勧めています。急にお産が近づいたときの連絡方法も、かかりつけ医と決めておきます。

出典:目黒区「妊産婦・乳幼児のための災害の備え・対策」/日本呼吸器学会「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)に関するQ&A」/厚生労働省「災害時医療情報閲覧機能」の案内/あかちゃんとママを守る防災ノート(内閣府 検討会資料)

まとめ:妊娠中の防災は「いつも持つ物」と「家族の段取り」から

  • 母子健康手帳とマイナ保険証は、いつも持ち歩く
  • 急なときの連絡方法を、かかりつけの産院と決めておく
  • 車中泊は足を伸ばせる寝床・水分・かかとの上げ下ろし。寝床はパートナーが作る
  • 避難所では「妊娠中です」と先に伝える
  • 夫婦で災害の話を一度しておく(171・集まる場所・頼る人)
  • 持ち出し袋は本人を軽く、重い物はパートナーが持つ

救急救命士の私でも、妻の妊娠中は災害の話をしていませんでした。知識があっても、不安は不安です。だからこそ、今夜ひとつだけ。次の妊婦健診で「災害で電話がつながらないときは、どうすればいいですか」と聞くことを、二人で決めてください。

それではっ!